会社の外で100名のリーダーに!「パラレルキャリアを実践するなら絶対にゴールを見失うな」E2D3五十嵐氏インタビュー

「質問するやつはとにかく偉い」。このスライドがバズり、Twitter 上でのリツイート数は24,000を超えようといています。これは『BEYOND 〜最先端に潜む数学たち〜』というイベント中の、E2D3代表五十嵐康伸氏による発表スライドの一部。五十嵐氏はパーソルキャリア株式会社Innovation Lab. エキスパートとして会社に勤めながら、オープンソースのデータ可視化アプリケーション『E2D3(Excel to D3.js)』の開発を個人で行っています。いわば今注目の働き方、パラレルキャリアの実践者です。今回は、社外活動での実体験をインタビュー。「会社に捕らわれない働き方」を誰もが考える時代に、その可能性と必要な心構えを聞きました。

E2D3 代表 五十嵐 康伸 氏

大学院でデータ解析の研究を行ったのち、オリンパス株式会社(旧オリンパスソフトウェアテクノロジー株式会社 以下オリンパス)へ入社。社外のIT勉強会やハッカソンなどに参加したことをきっかけに、オープンソースのデータ可視化アプリケーション「E2D3」の開発を進めるに至る。その後、数回の転職を経て、現在 パーソルキャリア株式会社(以下パーソルキャリア) Innovation Lab.にエキスパートとして勤めながら、100名のメンバーと共にE2D3の更なる研究開発に勤しんでいる。

「世の中を良くするサービスを作りたい」会社に囚われない働き方の第一歩

五十嵐氏は大学卒業後、大学院へ進学し、脳内データのパターンに関する研究を行っていました。その後、データ解析の研究からデータ計測の研究へと専門領域を移し、脳の中を観ることが出来る新しい顕微鏡の開発を始めます。「これはきっと世の中に求められているものだ」と、製品化を目指して企業に売り込みを行いましたが、それは成功しませんでした。

諦められなかった五十嵐氏は、顕微鏡のメーカーであるオリンパスに入社し、製品化を実現しようとします。そこでひとつの気付きを得ることになりました。

「オリンパスに入社すると、私の考えていたものと同じ顕微鏡の研究開発が行われていました。そして、私もその研究開発に携わりましたが、製品化に至ることはありませんでした。理由はマーケットが小さく十分な売上が見込めなかったから。ハードウェア製品の製作には大きなコストがかかります。ビジネスを考える上での市場規模という観点に気付くことが出来たのは大きな収穫でした。」

大きな挫折ではありましたが、この時期の経験から五十嵐氏はその後にも大きく役立つスキルを得ることができました。それが、プロジェクトマネジメント、ファシリテーション、品質管理という製品開発に必須の3つのスキル。

「この3つのスキルを手に入れたことが自信になり、自分の目標“世の中を良くすると思う製品作り”への挑戦心はより高まりました。ただ、私所属していた部署が会社から求められる役割に新製品開発プロジェクトの立ち上げ提案は入ってなかったんです。これは、会社の外に出て、個人でつくるのが良かろうと思いました。」

そうは言っても何を作ろうか?ひとつ大事にしたことは、個人で開発するならコストのかからないソフトウェア製品開発の方が良さそうだということです。自分の作りたいサービスを見つけようと、まず五十嵐氏は情報収集のために社外の勉強会に参加し始めます。この動きが会社に囚われない働き方の第一歩でした。

E2D3が生まれるまで出したアイデアは200個

サービス開発のための情報収集の中で、今まで縁遠かったIT系の勉強会にも参加するようになった五十嵐氏。最初に足を運んだ2012年が3回。翌年が10回。その数は年々増え続け、2016年には年間40回。インプットだけでなくアウトプットの必要性も感じたため、アイデアソンやハッカソン・コンペにも参加し、2014年の参加数は27回にも上りました。

「 私はアイデアソン・ハッカソンに出る前に、テーマを調べて1回あたりだいたい10のアイデアは考え、それを2〜3個に絞って参加します。つまり、2014年でいうと、最低200個くらいはサービスを考えたことになります。その中で評価されるものをやり続けたら、ひとつ残ったのがE2D3でした。 」

五十嵐氏はインプットと同時に仲間作りをはじめます。「一緒に何か作らないか?」と声をかけて集まった最初の仲間はオリンパスの同僚が2人。 E2D3のアイデアも、この仲間たちと 雑誌「日経ソフトウエア」主催のOffice用アプリ開発コンテストのために生まれたものです。

五十嵐氏達は、E2D3を持ってあらゆるアイデアソンやコンペに参加。失敗と成功を繰り返しながらも、E2D3は確実に評価を得ていきます。そして、ひとつの転機が訪れます。

加速する社外活動

数々のイベントに挑戦する中、E2D3は、エムエム総研主催、日本マイクロソフト特別共催の「Microsoft Office アプリ アイデアコンテスト」で上位3作品に入り、賞金20万円を獲得しました。

「この出来事は私たちにとって、とても大きなことでした。会社員でありながら、本業以外のことでお金を得ることなんて、そうそうあることじゃありません。周りからも反響がありました。私はこの機会だからと、一緒にE2D3を開発する仲間をSNSで募りました。そうすると14人の人が新たにジョインしてくれ、 E2D3 ver.0.2 、 ver.0.3 を作りました。」

その後、勉強会で出会った株式会社ユーザーベースの竹内秀行氏の手助けがありver.0.4 が完成。それはもう“革命的なデキ”だったそうです。この頃からE2D3の動きは加速します。

「マイクロソフトさんの後押しがあって、Schooの授業をさせていただくことも出来ました。私達は社外活動、言わば趣味でやってるのに、Schooの授業できるなんて、めちゃくちゃ楽しいじゃないですか!会社の外なのに、3ヶ月に1回、賞を取ったり、オンライン授業を企画したりと忙しい日々が続きます。社外活動は大変でもあったけど、こうして評価してもらえたから続けることができました。」

そうして活動が加速する中で、当初3人だった仲間は、全国100人にまで広がっていました。

「 E2D3の人 」と呼ばれるようになって

E2D3が技術者の中で注目されるようになった今でも、五十嵐氏はパーソルキャリアの中で会社員として働いています。 会社に囚われない働き方と両立した、パラレルキャリアを実現しているとも言える五十嵐氏。パラレルキャリアは注目される働き方ですが、ご本人はその強みと大変さのどちらも実感しているといいます。

「ITコミュニティにおいて私は、社名で呼ばれるより“ E2D3の人 ”と呼ばれます。私も相手も、お互い会ったことはありませんが、プロダクトを通じて私を知ってもらうことが出来るんです。これは会社の看板に依存しない、個の人間としての強さを得られたと思っていますね。そして、もちろん大変さもあります。会社での仕事と社外での仕事は相当意識をしないと両立できません。」

社外での仕事でリーダーをやるということは、社長をやるようなものだと五十嵐氏は言います。開発のみならず、人事も広報も会計もカスタマーサポートも把握しなければいけない。ここで五十嵐氏を助けているのが、オリンパスで手に入れたプロジェクトマネジメント、ファシリテーション、品質管理のスキルだそうです。

「 E2D3 は儲けようと思ってやっていません。一度はVCを回って事業化のために動きましたが上手くいかず、そこでオープンソースにして世の中を巻き込んで面白おかしくやろう!という方向性に振り切りました。だから、今E2D3の開発を何のためにしているかというと、人類の限界を超えるための研究なんです。」

大学院の研究者からキャリアをスタートさせた五十嵐氏は、今日に至るまで“自分は研究者だ”ということに拘っています。五十嵐氏は、研究者としてE2D3を通じてデータ可視化における人類の限界突破に取り組んでいるのです。

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会社の外だからこそ、何のためにやるかを見失ってはいけない

 

この記事を書いた人

はぎー

geechsマガジンのエディター・ライターと、ITエンジニア向け無料イベントスペース『21cafe(ニイイチカフェ)』の管理人を兼務。イベントレポート・インタビュー記事を中心に執筆中。女性アイドルが大好きで、特にハロー!プロジェクトに心酔している。

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